ドラマ『恋は闇』を観て、心を掴まれたのはストーリーだけじゃなかった。
画面越しに滲み出る、登場人物たちの「纏っているもの」——それが、彼らの感情を代弁する衣装でした。
幸野もかの着る、くたっとしたカーディガンの寂しさ。
設楽浩暉のシャツの白さが、彼の「仮面の優しさ」をどこか際立たせる。
そして蔵前沙樹が纏うロングジレは、冷静であることを自分に課すように。
今回は、2025年最新情報として、岸井ゆきの・志尊淳・西田尚美らメインキャストの衣装を徹底調査。
どこのブランドか？真似できる？そのファッションに込められた意味とは？
“真似したくなる”のはきっと、スタイルじゃなく「感情」なんです。
衣装から『恋は闇』をもっと深く読み解きましょう。
岸井ゆきの（幸野もか役）の衣装｜ナチュラルに宿る無垢と虚無
淡色リネンワンピースに込められた「空っぽ」の美しさ
“何も起きないように”、そう願って選んだような服——
岸井ゆきのさん演じる幸野もかの衣装には、そんな「自己防衛」がにじんでいます。
彼女がよく着ているのは、BEAUTY&YOUTHのリネン素材ワンピースや、Samansa Mos2の小ぶりなバッグ。
色はベージュやアイボリーといった柔らかく、輪郭をぼかすような色合い。
スタイルとしては「ナチュラル系」と言われがちですが、そのナチュラルさこそが“空虚さ”を演出しているとも言えます。
ふわっと揺れる裾、くたっとした質感——それは彼女の心が“なにもない空白”に近いからこそ、しっくりくる。
選ばれたブランドとスタイリングの意味
特筆すべきは、着ている服が「主張しない」こと。
例えば、niko and…のカーディガンは、まるで“誰かの忘れもの”のような存在感。
今っぽさやトレンドとは少し離れた選択は、彼女が「誰かの記憶の中に埋もれたい」という無意識を映しているのかもしれません。
また、もかの衣装は全体的に「くすみカラー」で統一されています。
これは彼女の内面にある、“喜びを感じてはいけない”という無意識のルールを感じさせます。
幸野もかは、感情を直接語らない代わりに「服で語っている」。
視聴者が「なんかこの子、放っておけない」と感じるのは、ファッションの力が大きいのです。
志尊淳（設楽浩暉役）の衣装｜優しさの裏側を着こなす男
チャコールグレーのジャケットが示す“仮面”
設楽浩暉という男は、「優しい」のに「信用できない」——
その曖昧さを、そのままファッションに落とし込んだようなスタイル。
彼が着るのは、URBAN RESEARCHのチャコールグレージャケットや、UNIQLOの白いシャツ。
シンプルな組み合わせなのに、どこか「近づきたくない」雰囲気があるのはなぜか？
それはおそらく、色彩の“距離感”にある。
チャコールグレー＝曖昧さ、白＝清潔感。
一見清潔そうに見えて、心の中に“濁り”を隠しているような印象が、視覚的に伝わってくるのです。
アクセサリーと足元に宿る彼の“危うさ”
浩暉の足元は、Dr.Martensのブラック厚底ブーツ。
あまりにも無骨で、優しげな彼のキャラとのギャップが、視聴者の“違和感”を生みます。
そして、よく見るとシルバーリングや片耳ピアスといった小物が散りばめられている。
スタイリングとしては地味なのに、どこか「わざと乱してる」ような危うさがある。
彼のファッションは、「優しく在ること」を武器にしていることを物語っています。
つまり、“信用させるために、整えている”服装。
視聴者が無意識に抱く“裏がありそう”という印象は、この丁寧な衣装設計によって導かれているのです。
西田尚美（蔵前沙樹役）の衣装｜母でありプロデューサーである女の顔
ウィンドウペン柄コートに込められた“冷静さ”
蔵前沙樹というキャラクターは、冷静で、論理的で、感情に左右されない人間に見える。
だがその“冷静”すら、彼女が築いた装いなのかもしれません。
第2話で彼女が纏っていたのは、PLAIN PEOPLEのウィンドウペンカラーレスコート。
柄の整然とした規則性が、彼女の「崩れてはいけない」という決意を象徴しています。
無地ではなく、柄を選んでいることが、彼女の複雑さを示しているようにも感じられます。
回ごとに変化するファッションが語る心情の揺れ
蔵前の衣装は話が進むにつれて少しずつ「ゆるさ」が出てきます。
例えば、RE SYU RYUのロングジレや、C+のジップアップカーディガン。
最初は隙のないファッションだったのが、徐々に“人間味”のある柔らかさを帯びてくる。
この変化は、沙樹自身が「役割」から「人間」に戻っていく過程を示しているのかもしれません。
彼女が母親であり、仕事人であり、そして一人の女性であるという多面性は、衣装を通してじわじわと滲み出てくるのです。
スタイリングは、彼女が自分自身にかけている“呪い”のようでもあり、解けていく魔法のようでもある。
視聴者はその変化を、無意識のうちに服から読み取っているのです。
ドラマ『恋は闇』衣装に共通する3つの“静かな感情”
① 着心地重視＝“守られたい”心理
『恋は闇』の登場人物たちは皆、「自分を守る」ための衣服を選んでいます。
それは露骨に防御的というわけではなく、やわらかい素材や肌馴染みの良い色といった“安心できるもの”を好んでいるということ。
彼らの選ぶ服には、「誰かに見られたい」よりも「誰にも攻撃されたくない」という願いが滲んでいる。
つまり、着心地＝心の守り方でもあるのです。
② 淡色×無機質＝“感情を閉ざす”ファッション
全体的に、衣装のトーンは明るすぎず、暗すぎない「グレイッシュ」な中間色が多用されています。
これはまさに、感情を表に出さずに“保留”している状態の色。
ベージュ、スモーキーグリーン、チャコールグレー——
感情の強弱をできるだけ抑え、“静かに沈む”ような心の状態を衣服に託しているようです。
③ 素材の重ね＝“過去を隠す”レイヤード構造
衣装にレイヤード（重ね着）が多いのも、『恋は闇』ならではの特徴。
これは単なるファッションではなく、登場人物が“何かを隠している”という心理状態を視覚的に演出しています。
薄手のニットにカーディガン、ロングジレにストール——
それらはまるで、過去や傷を「何重にも覆って生きている」人間の表れのよう。
「語られないこと」が多いこのドラマにおいて、衣装は最も雄弁にキャラを語っているのです。
まとめ｜衣装から見える『恋は闇』の登場人物たちの“本当の顔”
『恋は闇』という物語は、人の心の奥にある“言えない感情”を描くドラマです。
そしてその感情たちは、セリフではなく、服に宿ることが多い。
岸井ゆきのさんが演じる「もか」は、何も持っていないふりをする女の子。
志尊淳さん演じる「浩暉」は、優しさで人を引き寄せる男。
西田尚美さんの「沙樹」は、役割の中でしか生きられない母。
でも彼らが着ている服は、それぞれが「本当の顔」を隠すための鎧であり、同時に暴く鏡でもある。
衣装を見ることで、私たちは“感情の伏線”を拾っていたのかもしれません。
“真似したくなる”と感じるとき、それはただのオシャレではなく、「この服を着てみたら、自分も少し変われるかも」という小さな願い。
ドラマのファッションは、ただの衣装ではなく、私たち自身の「内面のストーリーテリング」でもあるのです。
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