しあわせって、案外「どこにいるか」で変わるものなのかもしれない。
NHKのドラマ『しあわせは食べて寝て待て』。
主人公・麦巻さとこ(桜井ユキ)が心と体を立て直していく過程は、どこか観ている私たち自身の“再起”にも重なる。
彼女が住む団地、ふと立ち寄ったカフェ、自然に包まれた温泉…。
そのひとつひとつが、人生のピンチから少しずつ“しあわせ”を取り戻していく風景だった。
この記事では、そんな物語を支えたロケ地を一挙にご紹介します。
気になっていたあの場所、実際に訪れることができるかもしれません。
「ただ、生きてるだけで疲れた」そんな時、ふと行ってみたくなる場所がここにある。
滝山団地|さとこの“新しい人生”が始まった場所
昭和のぬくもりが残る東久留米の団地
主人公・さとこが新生活を始めた舞台、それが東京都東久留米市にある「滝山団地」です。
築45年、家賃5万円という設定の古い団地は、まさにこの滝山団地をモデルにしています。
団地特有の無機質さの中に、不思議な温かさを感じるのは、昭和の面影が色濃く残っているから。
窓から差し込む光や、階段の鉄の手すり、どこか懐かしい音が響く外廊下。
それらすべてが、「何もないけど、ここで生きていこう」というさとこの決意を、静かに支えているように見えました。
名シーンを生んだ「船型の遊具」の公園とは?
中でも印象的なのが、団地敷地内にある「東大公園」。
大きな船の形をした遊具があり、第1話でさとこと羽白司(宮沢氷魚)が語り合うシーンの舞台になっています。
都会のすぐ隣で、こんなにも自然に囲まれた空間があるのかと驚くほど、緑が多くて静か。
日常の中でふと立ち止まりたくなる、そんな“心の休憩所”のような場所です。
唐デザインのビル|都会の中の小さな決意
日本橋の「山脇ビル」が舞台に
さとこが週4で働くパート先「唐デザイン」のオフィスとして登場するのが、東京都中央区日本橋久松町にある「山脇ビル」です。
ドラマでは一見さりげない場所として描かれていますが、実はこのビル、昭和レトロと現代建築が融合したような不思議な佇まい。
真新しいガラスのビルでもなく、老朽化した建物でもない。
「過去を抱えながらも、前に進んでいる」さとこの姿とどこか重なります。
都会の喧騒の中で芽生える、新しい私
中央区というビジネス街の真ん中にあって、ここだけ時間がゆっくり流れているような空気感。
そんな場所で、さとこは「自分の価値」を少しずつ取り戻していきます。
どこか居心地の悪さを感じていた都会の中に、自分の居場所を見つける——。
それは、働く私たちすべてにとっての希望の描写なのかもしれません。
スーパーや病院もリアルに存在する
埼玉県川口の「新鮮市場」での日常
ドラマの中で、さとこが買い物をするスーパーとして登場したのは、埼玉県川口市にある「新鮮市場 東本郷店」。
地元の人々に愛される庶民派の市場で、夕飯の買い物をするさとこの姿が映し出されます。
このシーンは、「生活を立て直す」とは、まずは食べることから——そんなメッセージが込められているようでした。
病と向き合う場面に登場した「千葉西総合病院」
さとこが定期的に通院する「慶成大附属病院」として使われたのが、千葉県松戸市にある「千葉西総合病院」です。
病院という場所は、ともすれば「不安」や「恐れ」と結びつきがちですが、
この病院の外観はどこか明るく、希望を感じさせるような印象でした。
「病と共に生きる」というリアルなテーマを抱えながらも、
ドラマは決して重苦しくならず、静かに寄り添うような視線を保っていました。
温泉「ほおじろ荘」|心と体をほぐす癒しの時間
静岡・駒の湯荘がモデルの温泉宿
第3話で登場する温泉旅館「ほおじろ荘」。
そのロケ地となったのが、静岡県伊豆の国市にある「源泉 駒の湯荘」です。
木造の建物、自然湧出の源泉かけ流し、静けさに包まれた山の中の一軒宿——。
日常から少し離れて、深呼吸したくなるようなロケーションが、画面越しにも伝わってきました。
自然の中で、静かに湧き出す感情
このエピソードでは、さとこが羽白とともに温泉に浸かりながら、これまで言えなかった本音をぽつりと零すシーンがあります。
その言葉は湯気に溶けて、聞く人の心にも静かに染みてくる。
自然の力と、湯のぬくもりが、人の感情を優しくほどいていく——。
「癒し」という言葉では足りない、深い再生の瞬間がそこにはありました。
千葉の山「きみつのさんぽ道」|心の坂道を登って
第5話のハイキングシーンに登場
さとこたちが訪れたハイキングのシーンは、千葉県君津市にある「きみつのさんぽ道」で撮影されました。
木々のざわめき、小鳥のさえずり、足元に広がる落ち葉の道——。
都会の喧騒から離れ、自然の中をただ歩く時間が、心に静かな余白を与えてくれます。
自然が心を映す鏡になる場所
人は、登るときよりも降りるときのほうが、いろんなことを考える。
この山道でも、さとこが過去と向き合うような表情を見せる場面が印象的でした。
「無理に元気になる必要はない」
そんなメッセージが、草木の呼吸とともに、そっと語りかけてくるような場所です。
ドラマに登場する2つのカフェの魅力
蓮月(大田区)|昭和の香りがする古民家カフェ
第7話でさとこと乙女が語り合うシーンに登場したのが、東京都大田区にある「古民家カフェ蓮月」。
昭和初期に建てられた建物をリノベーションしたこのカフェは、木の温もりと和の趣が魅力。
まるで時間が止まったかのような空間で、二人の本音がゆっくりと零れていくシーンが印象的でした。
Cafe Dining&Bar 104.5|過去と向き合うモダン空間
第3話でさとこがかつての職場の同僚とランチをする「King Fisher」のロケ地は、東京都千代田区にある「Cafe Dining&Bar 104.5」。
モダンでおしゃれなインテリアが特徴のこのカフェは、「思い出すには少し苦い」場所として描かれています。
かつての自分と、今の自分。
ふたつの時間が交差するようなこのカフェで、さとこは一歩ずつ“今”を生きる覚悟を固めていきます。
まとめ|ロケ地を辿れば、もう一度“しあわせ”に出会える
『しあわせは食べて寝て待て』に登場するロケ地は、どれも派手ではありません。
けれど、そのどれもが「ここで生きていこう」と思えるリアルな場所ばかりでした。
団地の一室、ちいさなスーパー、山道の途中、湯気の立つ温泉、レトロなカフェ——。
それらは、さとこの再生の物語と深くリンクし、私たち視聴者の心にもじんわりと温もりを残します。
「人生を変えるのは、大きな決断じゃなくて、静かな場所との出会いかもしれない。」
そんなふうに思わせてくれる、ドラマの風景たち。
あなたもぜひ、さとこが歩いた“しあわせの地図”を辿ってみてください。
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