「あの暴走司会者が、今や農業の伝道師に？」
自動車番組『Top Gear』の破天荒な司会者として知られたジェレミー・クラークソン。毒舌と皮肉を武器に世界中の視聴者を笑わせてきた彼が、突如として「農業」に飛び込んだ──そんな異色のドキュメンタリーが『ジェレミー・クラークソン 農家になる（Clarkson’s Farm）』です。
2021年にAmazon Prime Videoで配信が始まって以来、本作は世界中で話題を呼び、農業の“地味”なイメージをくつがえしました。素人農家として失敗を繰り返すクラークソン、支える個性豊かな仲間たち、そして何より、自然や地域社会と向き合うリアルなドラマ。そのすべてが、観る者の心を掴んで離しません。
この記事では、そんな『ジェレミー・クラークソン 農家になる』の魅力を、各シーズンごとにじっくり掘り下げてご紹介します。未視聴の方も、ファンの方も、きっと何かを感じ取れるはずです。
『ジェレミー・クラークソン 農家になる』とは？
番組の基本情報
『ジェレミー・クラークソン 農家になる（Clarkson’s Farm）』は、Amazon Prime Videoで配信されているドキュメンタリーシリーズです。
舞台はイギリス・コッツウォルズにある「ディドリー・スクワット農場」。かつて投資用として所有していたこの農地を、ジェレミー・クラークソン自らが“自分の手で耕す”という無謀なチャレンジに踏み切ったところから物語は始まります。
番組は、彼が農業の素人として直面する数々の困難や、思い通りにいかない自然の力、地元住民との関係性などを、ユーモアと皮肉を交えて描いています。農業の“美化”ではなく、“泥臭さ”に光を当てたことで、多くの視聴者から「共感できる」との声が上がりました。
なぜ“農業”なのか？クラークソンの動機
クラークソンが農業に目を向けた背景には、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響もあったと言われています。遠出が制限され、自宅近くでの生活に目を向けざるを得なかった時期、彼は「自分の土地を本当に活かすにはどうすればいいか」を考え始めたのです。
農業に対して無知であることを公言しながらも、クラークソンは“知る”ことの大切さを体現していきます。時に農政への怒りをぶちまけ、時に涙ぐむ──その真摯な姿勢が、エンタメの枠を超えて観る者の心を揺さぶるのです。
シーズン1の見どころ（2021年）
初心者農家の悪戦苦闘
シーズン1では、クラークソンが農業の「超」がつく初心者として、いきなり350ヘクタールもの広大な土地を自ら耕すという大胆な挑戦に乗り出します。
トラクターの操作すらおぼつかず、天候に翻弄され、機材トラブルに見舞われる毎日。
特に話題となったのは、クラークソンが高価なランボルギーニ製トラクターを購入し、操作不能に陥るエピソード。自動車知識はあっても、農業はまったくの別物。「知らないことだらけ」に直面する彼のリアルな姿が、笑いと同時に共感を呼びました。
キャラクターの魅力と人間ドラマ
そしてこのシーズンで何より印象に残るのが、個性豊かな登場人物たちです。
地元の若者カレブ・クーパーは、知識も経験もある頼れる存在ながら、クラークソンには一切忖度せずツッコミまくるスタイルで人気に。
「カレブに全部言い負かされるクラークソン」が、ある意味この番組のハイライトとも言えるでしょう。
また、冷静な財務アドバイザーのチャーリー、ショップを運営するリサなど、農場に集う仲間たちとの関係性が、単なる“挑戦もの”に留まらず、温かくも不器用な人間ドラマを生み出しています。
シーズン2の見どころ（2023年）
牛の飼育と新事業への挑戦
シーズン2では、農場経営の新たなステップとして、クラークソンが牛の飼育に挑戦します。
「肉を売って儲けよう」という安直な発想から始まったこのプロジェクトですが、当然ながら現実は甘くありません。
牛の健康管理、施設整備、餌代のコスト……一筋縄ではいかない現実に、クラークソンはまたしても頭を抱えることになります。
さらに、農場で育てた食材を提供するレストランの開業にもチャレンジ。
しかし、地元行政の複雑な規制や住民からの反対により、なかなか前に進みません。
この過程で露わになるのが、農家がビジネスを展開する上で直面する“見えない壁”。クラークソンがそれにどう立ち向かうのか、その姿勢にも注目です。
規制との戦いと地元住民との関係
シーズン2では、「農業は自然との闘いだけではない」という現実が浮き彫りになります。
とりわけ描かれるのは、役所との度重なる衝突。
レストラン開業に必要な許可がなかなか下りなかったり、看板の掲出にも厳しい制限があったりと、制度の煩雑さと戦う姿が象徴的です。
それでもクラークソンは、地域住民と向き合い、時に謝り、時に交渉しながら少しずつ関係を築いていきます。
番組を通して、農業は「人との関係性を耕す仕事」でもあるということに気づかされるシーズンです。
シーズン3の見どころ（2024年）
自然災害と農場経営の苦悩
シーズン3では、クラークソン農場が天候不順や自然災害に苦しめられる様子がリアルに描かれます。
干ばつや長雨、気温の変動──こうした環境の変化は、収穫量に直結し、農場の経営を揺るがします。
計画していた作物が育たない、コストばかりがかさむ……その焦りや無力感が、これまで以上に深くにじむシーズンです。
そしてここでも浮かび上がるのが、「自然には勝てない」という厳然たる事実。
クラークソンの焦燥や苛立ちは、農業従事者なら誰もが一度は感じる現実そのもので、笑いよりもしみじみとした共感を呼び起こします。
視聴者を唸らせた“涙のエピソード”
このシーズンでは、これまでユーモアで包み込まれていた物語に、静かな感情のうねりが生まれます。
その象徴とも言えるのが、クラークソンが家畜の死や病気と向き合うシーン。
命を扱うということの重み、そしてそれを「日常」として抱えている農家のリアルに、言葉を失う視聴者も少なくありませんでした。
また、番組後半ではチームの一体感がさらに強まり、「農業は一人でやるものじゃない」というメッセージがより明確になります。
苦しい時期に支え合う仲間の存在が、番組にじんわりとした感動を与えています。
シーズン4の見どころ（2025年）
カレブの不在と新キャラ・ハリエット
シーズン4では、ファンにとって衝撃的な変化が訪れます。
なんと、これまでクラークソンを支えてきた右腕・カレブが一時的に不在に──その代わりとして登場するのが、若き女性農業者・ハリエットです。
カレブとは違ったアプローチで農業に向き合うハリエット。
彼女の登場は、クラークソン農場に新たな風を吹き込み、男女・世代の違いがユーモアと衝突を生み出します。
「クラークソン節」がどう彼女と絡んでいくのか、視聴者としてはハラハラしつつも目が離せない展開が続きます。
ジェレミーの健康問題と農場の未来
また、シーズン4で新たに描かれるのが、ジェレミー・クラークソン自身の体調不安です。
疲労やストレスが蓄積し、身体的にも限界が見え始める中、それでも農場を守りたいという彼の想いは深まっていきます。
これまで「暴言」や「失敗」で笑わせてきた彼が、“年齢”や“限界”という現実にどう立ち向かうのか。
視聴者の中には、そんなクラークソンの姿に「父親」を重ねたり、「自分自身の未来」を感じたりする人もいるかもしれません。
このシーズンは、農業ドキュメンタリーでありながら、一人の男の人生ドラマとして、シリーズにさらなる深みを与えています。
シリーズを彩る登場人物たち
カレブ・クーパーの人気の秘密
シリーズの“もう一人の主役”とも言えるのが、若き農業従事者カレブ・クーパー。
地元出身で、小柄でちょっと気難しそうな見た目に反して、彼の口調はいつも率直で、クラークソン相手にも容赦なく意見をぶつける姿が人気の理由です。
無知なクラークソンに「何度言ったら分かるんだ」と呆れながらも、最後はしっかりと支える姿勢に、信頼とユーモアが同居する不思議な魅力が宿っています。
視聴者の多くが「カレブにもっと出てほしい」と願うのも納得です。
リサ、チャーリー、そして地元の人々
農場のショップを運営するクラークソンのパートナー、リサ・ホーガンも重要な存在です。
彼女の“冷静すぎる”ツッコミは、暴走しがちなジェレミーの言動にストッパーをかける貴重なポジション。
さらに、経営面を支える財務アドバイザーのチャーリー・アイルランドも忘れてはいけません。
表情ひとつ変えずに「赤字です」と告げる彼の姿は、毎回のように番組に現実味と緊張感をもたらしています。
また、農場に登場する地元住民たちも個性豊か。
村の風景や方言、彼らとの会話には、都会では味わえない“生活のにおい”が染みついており、それが作品に深みを与えています。
『農家になる』が社会に与えた影響
“クラークソン効果”とは何か
『ジェレミー・クラークソン 農家になる』がもたらした社会的な影響は、単なるテレビ番組の枠を超えています。
中でも象徴的なのが、いわゆる“クラークソン効果”──彼が番組を通じて紹介した農産物や地元の商品が爆発的に売れたり、農業への関心が一気に高まったりする現象です。
実際、ディドリー・スクワット農場の直売所は連日長蛇の列。
“セレブ農家”という異色のスタイルが、これまで農業に関心がなかった層にまでアプローチできたことは大きな意義があります。
番組を通じて見える現代農業のリアル
しかし、この番組が本当にすごいのは、農業を「カッコよく」見せることではなく、「カッコ悪くても大変でも、生きていくためにやる」というリアルを描き切っていること。
自然災害、制度の壁、体力の限界、人間関係の摩擦──そうした困難に直面する日常が、視聴者に「農業って、ただの仕事じゃないんだ」と気づかせてくれます。
そして、農家の背後にある感情や覚悟が、ひとつの“人間ドラマ”として伝わってくるのです。
どこで見れる？視聴方法まとめ
Amazon Prime Videoでの配信状況
『ジェレミー・クラークソン 農家になる（Clarkson’s Farm）』は、Amazon Prime Videoにて独占配信中です。
2021年のシーズン1から始まり、現在（2025年時点）はシーズン4まで視聴可能となっています。
全シーズンにわたり、クラークソンらしい毒舌と皮肉、そして農業のリアルが詰まっているため、一度見始めたら止まらないシリーズ。
Prime会員であれば追加料金なしで楽しめる点も魅力です。
日本語字幕や吹き替えの対応
日本国内のAmazon Prime Videoでも、日本語字幕に対応しており、一部エピソードでは吹き替えも視聴可能です。
クラークソンの言葉遊びや皮肉は英語ならではのニュアンスがありますが、字幕でも十分に伝わるよう工夫されています。
スマホ、PC、スマートテレビなど、様々なデバイスで気軽に視聴できるので、まずは1話だけでも試してみるのがおすすめです。
まとめ｜“農業バラエティ”の常識を変えたクラークソン
『ジェレミー・クラークソン 農家になる』は、単なる“有名人の挑戦記”ではありません。
笑って、驚いて、時に泣ける──そんな予想外の感情の揺れをくれる、心からお勧めしたいドキュメンタリーです。
クラークソンの視点を通して描かれる農業は、不器用で、泥だらけで、でもどこか人間らしい。
それはきっと、私たちが日々の生活の中で忘れがちな「生きる実感」そのものかもしれません。
もし今、少しでもこのシリーズが気になっているなら──
まずはシーズン1の第1話を観てみてください。
クラークソンがトラクターに乗って暴走するその瞬間から、あなたの中の何かが変わり始めるかもしれません。
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