「ピントが合わない関係って、苦しいのに、なぜか忘れられない。」
苑生(そのう)が描くWEBコミック『被写界深度』は、そんな焦点のずれた感情を美しく、そして痛切に描いた傑作だ。
音楽をやめた少年と、写真を愛する同級生。ふたりの青春が交差する瞬間、読者の胸に静かに、しかし確実に波紋を広げる。
920万PVという圧倒的な人気を誇ったこのBL作品が、ついに実写ドラマ化。
主演に宇佐卓真と平野宏周を迎え、6月20日よりFODにて独占配信がスタートする。
本記事では、原作コミックの魅力からドラマ版の見どころまで、“感情のぼけ味”に宿るリアルを深掘りしていく。
好きになることに、正解なんていらない。ただ、その瞬間の痛みも、美しさも、忘れたくないから。
『被写界深度』とは?原作コミックの魅力に迫る
苑生が描く“感情の焦点”が合わないふたり
高校時代、音楽に情熱を注いでいた早川秀一郎は、ある日突然それを手放す。
才能と努力が一致しない現実、夢を続けることの苦しさ。そんな閉塞感の中で彼は、写真部に所属するクラスメイト・紺野遼平と出会う。
カメラを通して世界を見つめる紺野。
言葉は少ないけれど、彼の視線には常に「誰かをちゃんと見ている」という優しさがあった。
ふたりの距離は少しずつ近づいていくけれど——
心のピントが合うには、まだ“深度”が足りなかった。
苑生が描くのは、ただのラブストーリーではない。
劣等感、嫉妬、羨望、自己否定…思春期特有のざらついた感情たちが、リアルな言葉と間で描かれている。
その“にじみ”こそが、この作品の美しさであり、読者の胸に深く刺さる理由でもある。
920万PVの理由:読者を惹きつけたポイントとは
WEB連載時から大きな話題を呼び、累計PV920万を突破した本作。
人気の背景には、ただのBLにとどまらない「感情の解像度」がある。
- モノローグのリアルさ
→ 言葉にしきれない心の動きが、行間で伝わる。 - キャラクターの不完全さ
→ 完璧ではないからこそ、共感できる。 - カメラというモチーフ
→ “見ること”“見られること”が、関係性を静かに動かす装置になっている。
そして何より、「好き」という気持ちが、直線ではなく曲線で描かれること。
すれ違いながら、追いつこうとするふたりの姿に、多くの読者が自分の記憶を重ねたのではないだろうか。
実写ドラマ『被写界深度』FODで配信決定!
配信日・話数・視聴方法まとめ
苑生の人気コミック『被写界深度』が、待望の実写ドラマとして2025年6月20日よりFODにて独占配信されます。
- 配信開始日:2025年6月20日(金)20時〜
- 配信プラットフォーム:FOD(フジテレビオンデマンド)
- 話数:全6話(毎週金曜更新)
視聴にはFODプレミアムへの登録が必要となります。
原作ファンはもちろん、「静かな青春ドラマが好き」「心理描写に深みのある作品が見たい」という人にもおすすめです。
キャスト紹介:宇佐卓真×平野宏周のW主演に注目
主人公・早川秀一郎を演じるのは、若手実力派の宇佐卓真。
相手役の紺野遼平には、繊細な演技で注目を集める平野宏周が抜擢されました。
撮影現場でのふたりの関係性も、原作の空気感そのもの。
コメントでは、宇佐が「寄り添う作品にしたい」、平野が「自然な感情を大切にした」と語っており、原作の持つ静かな熱量を丁寧に再現しようとする姿勢が伺えます。
- 早川秀一郎 役:宇佐卓真
- 紺野遼平 役:平野宏周
- 監督:川崎僚(『25時、赤坂で』『みなと商事コインランドリー2』)
- 脚本:一戸慶乃(『ライオンの隠れ家』)
監督・脚本ともにBL・青春作品に定評のあるクリエイター陣。
視覚表現にもこだわり抜いた本作では、タイトル通り「被写界深度」=“心のピント”が、映像としてどう立ち上がるかにも注目です。
原作との違いは?映像化された“深度”の見せ方
原作ファンが気になる改変ポイント
実写化と聞いて、まず気になるのは「どこまで原作に忠実か?」という点。
『被写界深度』のドラマ版では、ストーリーの大筋はそのままに、映像ならではの演出が加えられています。
例えば、モノローグで語られていた感情が視線や間、カメラワークによって表現され、静けさの中にある“感情のざわめき”がより鮮明に浮かび上がります。
また、高校時代と大学時代の時間軸の使い方もドラマ的に再構成されており、回想と現在を織り交ぜる編集で、ふたりの距離感が視覚的に際立っています。
監督・脚本家が語る演出のこだわり
本作の監督・川崎僚氏は、BL作品の繊細な心理描写を丁寧に掬い取ることで知られる人物。
『25時、赤坂で』や『みなと商事コインランドリー』など、話題作を手がけた経験を活かし、本作でも「沈黙が語る演出」を徹底しています。
脚本の一戸慶乃氏も、「原作の良さを損なわず、でも映像ならではの余白を残したい」という姿勢で脚本を執筆。
セリフ一つひとつに感情のぼかしとシャープさが共存し、原作にあった“あの空気”を感じさせてくれます。
たとえば、カメラのピントを操作するシーンでは、ただのテクニック以上に、ふたりの関係性そのものが「被写界深度」に投影されているように感じられるはずです。
「見えすぎないからこそ、想像したくなる」。そんな演出の妙を、ぜひ画面越しに感じてみてください。
感情の“ぼかし”が胸に刺さる。『被写界深度』が描く青春の温度
音楽と写真。ふたりの「表現」が交差する
『被写界深度』の核にあるのは、ふたりの少年が持つ「表現手段」。
早川は音楽を、紺野は写真を。それぞれ違うレンズで世界を見つめ、感情を吐き出そうとする。
しかし、どちらも“うまく表現できない自分”に直面している。
音が出せなくなった早川と、言葉にできない紺野。そんなふたりが出会ったとき、互いの不完全さが不思議とフィットする。
感情を伝えるって、きっと、そんなにスムーズじゃない。
むしろ、「伝えたいけど伝えきれない」その瞬間にこそ、本当の温度が宿るのかもしれない。
嫉妬、羨望、恋心。言葉にできない感情のリアリティ
この物語が刺さる理由は、「好き」だけで説明できない感情を真正面から描いていることにある。
- 仲良くしたいのに、うまく話せない
- 近づきたいのに、避けてしまう
- 尊敬しているのに、嫉妬してしまう
どれもが、「青春のややこしさ」そのもの。
そして苑生の筆は、それらを決して断定せず、ぼかしの中に置いてくれる。
読者は、ピントが合った瞬間だけじゃなく、合わなかった無数の時間ごと、ふたりを好きになる。
この“にじみ”の美しさこそが、『被写界深度』の真骨頂だ。
まとめ|“好き”がピントを合わせるまで
苑生原作『被写界深度』は、ただの恋愛ではなく、“感情の深度”を描いた物語です。
伝えたい気持ちがあるのに、ピントがずれてしまう。
本当は近づきたいのに、見えすぎることが怖くて、距離をとってしまう。
そんなふたりが、音楽と写真という“表現”を通して少しずつ歩み寄っていく様子は、まるでフィルムを現像していくような丁寧さがあります。
実写ドラマ化によって、その曖昧な距離感や静かな感情の揺れが、より立体的に描かれる本作。
原作ファンにも、初めてこの作品に触れる人にも、きっと「わかる」と思える瞬間があるはずです。
“好き”って、ピントが合う瞬間も、合わない瞬間も、どちらも愛おしい。
『被写界深度』は、そのことをそっと教えてくれる物語です。
FODにて独占配信中。ぜひ、あなたの感情の焦点でも、彼らを見つめてみてください。
コメント