——嵩が夢を追い、のぶが信念を貫いたその場所には、時代の風がまだ吹いている。
昭和初期、社会の片隅で生きていた若者たちが、未来に希望を託して歩いた“学び舎”。
朝ドラ『あんぱん』は、その原風景に、温もりと痛みを刻み込んだ。
この物語の核をなすのは、「学ぶ」という行為の重みだ。
貧しくても、女の子でも、好きなことがある。——そう叫ぶように通った学校が、どこにあるのか知りたい。
あの校舎の木の匂い、廊下の光、階段のきしむ音。画面越しに感じた“懐かしい何か”の正体を確かめに行きたくなる。
そんなあなたのために、“のぶ”と“嵩”が通った大学・高校のロケ地を、ここに記しておきます。
『あんぱん』の大学ロケ地はどこ?
東京農工大学 農学部本館|嵩が通った芸術学校のモデル
嵩が夢を追って上京し、芸術にのめり込む——その象徴ともいえる学び舎が、東京都府中市にある東京農工大学 農学部本館だ。
劇中では「東京高等芸術学校」として登場し、合格発表のシーンや講義風景が撮影された。
1934年に建設されたこの建物は、国の登録有形文化財にも指定されており、時代を超えて存在する美しさがある。
外壁はレンガと石材で構成され、中央階段のステンドグラスや、静かな講堂の佇まいは、まさに“嵩が見上げた夢”そのもの。
現在も大学施設として使われているが、外観の見学は可能(※構内立入は要確認)。
訪れる際は、平日の授業時間帯を避けて、静かにその空気感を味わってほしい。
宇都宮大学 峰キャンパス|感情の揺れ動いた11話の舞台
もうひとつの大学ロケ地として話題になったのが、栃木県にある宇都宮大学 峰キャンパス。
特に第11話で登場した「峰ヶ丘講堂」は、嵩の心が揺れる名シーンの舞台となった。
2024年11月に撮影されたこの講堂は、クラシカルな内装と高い天井が特徴で、木造建築特有の“響き”が印象的だった。
地元紙でもロケ地として紹介され、大学関係者のSNS投稿からも、撮影時の静かな熱気が伝わってくる。
峰キャンパスへのアクセスは、宇都宮駅からバスで約20分。
一般公開はされていないが、外から建物を眺めることは可能だ。
あのときの嵩の表情を思い出しながら、そっとその前に立ってみてほしい。
のぶが通った師範学校のロケ地は?
茨城県立土浦第一高等学校旧本館|女子師範学校の設定
のぶが“女でも教師になりたい”という思いを胸に通ったのが、高知女子師範学校。
そのロケ地として選ばれたのが、茨城県立土浦第一高等学校 旧本館だ。
この校舎は、昭和5年(1930年)に建てられた和洋折衷の木造建築。
その凛としたたたずまいは、のぶの静かな闘志を映し出すかのように、美しく、どこか切ない。
現地では主に、授業風景や仲間と語らう中庭のシーンが撮影された。
特に、のぶが教師としての将来に思いを巡らせるシーンでは、木漏れ日が差し込む廊下が印象的だった。
現在、この旧本館は国の重要文化財に指定されており、外観の見学は可能。
予約制で一般公開される日もあるので、公式サイトをチェックしてからの訪問をおすすめする。
あの時代、“学ぶこと”が許されなかった少女が見つめていた景色。
今もなお、その空間に、彼女の息遣いが残っているような気がする。
嵩が通った高校のロケ地をたどる
東京学芸大学附属高校|“高知第一高校”のモデル
物語の序盤で描かれる、嵩の高校時代。
彼が絵に出会い、内に秘めた“好き”という衝動に目覚めたその場所が、高知第一高校として登場する。
このロケ地となったのが、東京都世田谷区にある東京学芸大学附属高等学校。
現役の国立高校として知られるこの学校は、近代的な校舎と落ち着いた校風を兼ね備え、撮影にも適した雰囲気を持っている。
劇中では、嵩が美術教師と出会い、自分の絵を初めて“肯定された”瞬間が描かれた。
その屋上、廊下、黒板の前——どのシーンにも、思春期特有の痛みと希望が込められている。
実際の学芸大学附属高校は立入禁止のため、一般公開はされていないが、外観を見学することは可能。
訪れる際には、静かな敬意を持ってその校舎を見上げてみてほしい。
「あの頃、確かにそこにいた。」
嵩が歩いた青春の断片が、今も校舎の風に残っているかもしれない。
まとめ|“歩いた時間”を追体験する旅へ
『あんぱん』の登場人物たちは、ただ教室で学んでいただけではない。
時代に抗いながら、未来を信じて、“学ぶこと”を選び続けた。
その背景には、決して派手ではないけれど、確かな重みを持った建物たちが存在していた。
東京農工大学の静けさ、土浦第一高旧本館の温もり、そして嵩が背中を押された高校の屋上——
どの場所にも、「生きるとは何か」を問い続けた彼らの痕跡が刻まれている。
ロケ地巡礼という言葉は軽いかもしれない。
でも、もしもあの風景を前に立ったとき、胸がふるえたなら、それはもう「旅」なのだ。
あの時代を追体験しに、そして自分の“何か”を取り戻しに——
今こそ、あなた自身の“あんぱん”を探す旅に出てみてはどうだろうか。
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